最近の不思議なできごと
どうも、茹で尻と申します。
みなさまいかがお過ごしですか。
今日はこの前あった不思議なできごとについてお話しようと思います。
2022年某日、こんなメールが届きました。
それは、株式会社Sueinser(スーインサー)に宛てられた腹痛発電研究所ポポぺラボからの取材承諾メールでした。
企業名、研究所名ともにまったく心当たりがなかったので、そのときは迷惑メールかな?とあまり気に留めていませんでした。
しかし、その数日後、私のスマートフォンに1本の電話がかかってきたのです。
はい、もしもし。
うわっ!出た!え、え〜〜と、ま、また連絡します!
ブチッ
しばらくしてまた同じ番号から電話が。
あの!株式会社Sueinserの方ですか!えっと!あの!ポポペラボなんですけど!インタビューの件で!
え?いやあの、私は……。
ちょっと主要研究所がば、ばく、爆発しまして!あの!代わりの場所は追って連絡します!
ブチッ
なんやったんや……。
初めは間違い電話だと思っていました。でもなにか心に引っかかります。
「ポポペラボ」
その印象的で言いづらい言葉はまさに、以前の迷惑メール(?)に書かれていた差出人の名前でした。
そのまた数日後、ポポペラボから再びメールが届きました。
内容はインタビューを行う場所の指定でした。そしてそこに記されていた場所は、かつて一度利用したことのある貸会議室だったのです。
っていうことがあったんよ。
へー。
なんか気持ち悪いよなあ。
ほんまに心当たりないん?
ないよ。うち大学生やし、インタビューする予定なんかないし。
でもなんか面白そうやな。
え?
行ってみれば?どうせ暇やろ。
いやいやいや、まあ行ける範囲ではあるけども……ちょっと怖すぎん?
うちも着いてったるから。
うーん……。じゃあうちらがインタビュアーのフリするってこと?
そう。
という流れで、私たちは「腹痛発電研究所ポポペラボ」に取材しに行く「株式会社Sueinser」の人間になりきることになりました。
とりあえずスーツ着とけばなんとかなるかな?
なる。知らんけど。
あとなんか質問考えてこいって言われてんねんよな。
質問もなにも、ポポペラボのことまったく知らんしな。そもそも腹痛発電ってなに?
それやねんけど、調べてもまったくヒットせんのよ。ポポペラボも、Sueinserも。
じゃあもうこっちで虚構を作り上げるしかないな!腹痛発電ってことは……
ちょっとちょっと、対応力高すぎへん?
そうして私たちはSueinserとポポペラボの虚構を作り上げ、質問を考えたのち、それを添付したメールをポポペラボに送信しました。
あと楽しくなって名刺と社員証まで作ってしまいました。(さすがに偽名を使っています。)
当日、友人にはアシスタントとして、取材内容を記録する役を演じてもらいます。
――インタビュー当日
ほんまに来てもうたで。
そうやで。今から私は結崎奏(ゆいさきかなで)、あんたは瀬西アイラ(せにしあいら)やからな。
この状況でなんでそんな演者魂燃やせんねん。
着いた。
行くか。
冷静に考えんでもこの状況確実にやばい。
つべこべ言わんと行くで。
はあ……。
ここまで来れば腹を括るしかありません。
コンコン
失礼しま――
!?
え???
お遊戯会???
めちゃくちゃな人たちが出迎えてくれました。
I'm glad to meet you!
実際にポポペラボの人がいたこと、そしてこの人たちの格好を受け入れるには時間がかかりました。
名刺!名刺交換!(小声)
はっ!失礼しました。わたくし株式会社Sueinserの瀬西アイラと申します。
アシスタントの結崎奏と申します。
所長の津田透子(つだとうこ)です。
平研究員の畠野一(はたのはじめ)です。
これまた手作り感満載の名刺。
場所変更急にしてごめんやで!まあまあ座ってえな。
は、はい。失礼します。
ちなみに左にいらっしゃる買い物中の主婦みたいな方は、弁護士の天元正(てんげんただし)さんというそうです。
なんで縦書きなんだ。
こうして着席した私たちは、以前作り上げた虚構を現実かのように説明します。
株式会社Sueinserは、新しい科学研究に挑戦する機関を応援し、世に広める活動を行っております。この取材をきっかけに、ポポぺラボ様の研究の素晴らしさを多くの人に伝えられればと考えております。
うむ。
では早速インタビューを始めさせていただきます。まずは、この研究をはじめられたきっかけを教えてください。
するとおもむろに、弁護士の天元さんがスマートフォンを取り出し、音楽を流し始めました。
♪(沖縄風のBGM)
……?
あれは6年前……
(やばいやばいなんか始まった。)
私が沖縄におった時のことでした。前から歩いてきたおっちゃんが「ねえちゃん、トイレ知らんかいさ?」って。
ほんでおっちゃんの顔見たら真むらさき。お腹痛いんやろな思って、家でトイレ貸したげる言うて招いたんです。
は、はあ……。
でも、おっちゃんそこから2時間ででこなくて。その間電気つけっぱなしですやん?おっちゃん苦しいのに、電気だけなくなるのは悲しいでしょ?
……仰る通りですね。
そんときひらめいたんやで。みんな幸せになる方法。ポジティブになるってことやで!
???
えーっと……つまり、おじさんに家のトイレを2時間占拠されて、そのときに電気がもったいないと思ったのがきっかけ、ということですね?
せや。
よくわかりました……。ありがとうございます。
本来であれば、ここから話を広げるべきなのでしょう。
しかし、ちゃんと答えが返ってきたことに驚いて思考停止してしまい、一問一答形式で取材を進めることしかできませんでした。
では2つ目の質問に移ります。腹痛発電の仕組みについて、詳しくお聞かせ願えますか。
わかりました!ここはわたくし畠野から、説明させていただきます!
♪(らららコッペパン)
腹痛発電とは、文字通り腹痛から発電することです。
その仕組みの核になっているのは、下利便を我慢しているときに起こる「せやで現象」です。
「お腹が痛い!」「下痢便を我慢してる!」
そんなとき、体から熱が出ますよね?熱が出ると、汗をかきますね?その汗が酸素に触れたときに起こるのが、「せやで現象」です。
ずっと何を言っているの?
この汗は、下痢便を我慢している特有の汗なんです。つまり苦しみ。マイナスエネルギーからしか生まれないんですね。
まったく内容が頭に入ってこない。
そしてこちら!我が研究所で発明した、せやで現象から発電する機械です。
これらをトイレに埋め込み、エネルギーを集めて発電します。
この機械がそんなすごいことを!?!?え、どれをどこに…?
えっと、これを、トイレの流すとこの逆側にホイって。
ホイって。
すみません、ちょっと間違いがありましたので訂正いたします。
えっ。
これはあのー、ブルーレット置くだけのところにですね、お花のように挿します。
せやで現象によって生じたエネルギーがこの羽の部分から取り込まれて、軸を通ってトイレの中に入っていきます。
あ、そうやそうや。ほんでこれは、さっきの機械で集めたエネルギーを電気に換えるものです。
これはどこに?
えーとここかな……
違います所長。
所長?
所長黙ってください!
あ、ああごめんごめん。徹夜やったもんで。
すみません本当に……。
これは背もたれのタンクに埋め込んであります。この中にはポポペラボ独自の技術で開発しました、ポポペラボ印のフィルターがあります。
ここを通過すると、エネルギーが電気に換わる仕組みです。
すごすぎる。
にわかに信じがたい話ですが、なんだか私も私でノリノリになってきてしまいました。
この機械自体は人とは触れてないようですが、「お腹が痛い」というのとどう繋がってるのですか?
これね、ちゃっちく見えますけど、すごいんですよ。置いてるだけで苦しみがどーんどん、どんどん、せやでせやでってなるんです。
わあ〜。ほんとうに最先端の技術なんですね。
せやです。
間違ってます所長。
しっかりしてくれ所長。
せやで現象が起こると、エネルギーは空気中に放出されます。そうして空気中に漂ってるものを集める、という仕組みになっています。
なるほど。それはいろんな場所に漂ってるんですかね?
下痢便になれば。
うん、なればな。
だそうです。
よし、次にいこう。
3つ目の質問です。ポポペラボでは、新しく"ゲリベン"という単位を作り出されたそうですが、その定義を教えてください。
もちろん新しい単位"ゲリベン"は私たちが調子に乗って作った嘘の単位です。果たしてどのような回答が返ってくるのでしょうか。
♪(かっこいいBGM)
もうBGMがあるのにも慣れてきたな。
はい。"ゲリベン"とは、新しく所長が発案した、電気のNEW単位です!0.05ゲリベン分の電力で冷凍パスタを解凍できます。
え、は、はあ。
そして、成人ひとりが1分間きばると、0.05ゲリベンが生み出されます。
な、なるほど……?
いやいやいや、おかしくない?"ゲリベン"なんて単位は存在しないはず。
どうしてこんなにもすらすらと説明することができるのでしょうか。
釈然としない点は多々ありますが、とにかく早くこの状況から脱すべく、私は次の質問に移りました。
4つ目の質問です。研究を進める中でもっとも大変だったことはなんですか?
せやなあ……あれは、1週間前のことや……
♪(しっとりしたBGM)
ひとりの研究員が
「所長、今のままでええんですか。所長は下痢便の限界、知りとうないんですか。」
って言うてきたんや。
私はその熱い情熱に押されてしまってねえ。畠野とテンアゲや!
テンアゲ。
「今からTwitterで腸の弱い人集めるで!」いうて募集したら、なんと100人協力してくれて、1万ゲリベン集まったんや。
えーと、1万人集まって、1万ゲリベン……
あ、ちゃいます。100人集めて、1万ゲリベン。
あ、100人。失礼いたしました。
私は何を確認してるんだ?
そしたら、我が研究所で取り扱ってるトイレがエネルギー過多で爆発してしまってなあ。
後始末が大変で、今朝までかかってしまって。それがいちばん大変やった事かなあ。
そういえば、最初の電話で爆発したとかなんとか言ってたな。
それは大変でしたね。
今の状況もね。
最後の質問です。ポポペラボの今後の展望をお聞かせください。
あんなことやこんなこともあったけど、ポジティブやったから乗り切れたんやと思います。
私はね、うちの研究員たちと、世界をポジティブにしたいと思ってますねん。この技術を広めていって、下痢便の悲しみからみんなを救うんやで!
素晴らしいですね。
下痢便が電気になるとな、みんなポジティブになるでしょ?だから……
皆 下利便になれ!!
これはウォルト・ディズニーと一緒。
は?????
なんて????
あの、すみません、もう一度いいですか?
下痢便がな、電気になると、みんなポジティブになるでしょ?だから、
皆 下利便になれ!!
これはウォルト・ディズニーと一緒。
ごめんなさい、2回聞いてもまったく理解できませんでした。
でも、とりあえずこれで私たちが用意した質問は出し切りました。
さっさと帰ろう、もう、なにもかも意味がわからないから。
力強い(?)メッセージをありがとうございます。
質問は以上です。本日は誠にありがとうございました。
やっと帰れる……。
そう思って席を立った矢先――
お待ちください!最後にお渡ししたいものが……。
はい?
おみやです。
なに???
おみやです。
ほんとうになに?
しかし、受け取りを断ればなにをされるかわかりません。
頂戴いたします!ありがとうございました!さようなら!
こうして私たちは足早に会議室をあとにしたのでした。
***
手元にはこの日のことが事実だとまだ信じられない感覚と、AKBの参考書だけが残っています。
ほんまになんやったんやろう……。最初のメールはどうやって、なんで送られてきたんやろか。
以上が私が経験した不思議なできごとです。
みなさんはくれぐれもこんな危険なことに首を突っ込まないように。
あ、あとせっかくなので、インタビュー内容を実際に記事にしてみました。
よろしければこちらもご覧ください。
それでは。